血友病、その現状と課題(医療介護CBニュース)

 毎年4月17日は「世界血友病デー」―。主に男性が発症し、血液が凝固するために必要な凝固因子というたんぱく質が十分に産生できない疾患である血友病。血液凝固第因子が欠乏している血友病A、第因子が欠乏している血友病Bの患者を合わせて、国内には現在、約5000人の患者がいるとみられている。「薬害エイズ問題」など、極めて大きな社会的問題も抱えてきた「血友病」の現状と課題を探った。

■遺伝子組み換え製剤の登場
 血友病治療薬は、非加熱性の血液製剤による「薬害エイズ問題」を踏まえ、ウイルスを殺すための加熱処理を施すなどの「進化」が続いてきた。しかし、血液由来である以上、理論的には感染のリスクがゼロになることはなく、今後どのようなウイルス感染が世の中にまん延するかも不透明という状況がある。
 こうした血液由来の感染性を排除するために登場したのが、遺伝子組み換え製剤だった。血友病Aの治療に用いる遺伝子組み換え型第因子製剤は1993年に発売された。また、今年1月にはワイスが血友病B治療薬「ベネフィクス」を発売。同社のヘモフィリア事業部の神野浩一氏(マーケティング部長)と地宗秀樹氏(プロダクトマネージャー)によると、「理論的にはウイルス感染のリスクがゼロのため、極めて安全性が高い」という。
 血友病Aの領域では安全性の高さが評価され、遺伝子組み換え製剤が7割を超える程度のシェアを獲得しており、「恐らく血友病Bの領域も同じようなトレンドを示していくのではないか」と2人は指摘する。

■治療は「定期補充療法」にパラダイムシフト
 では、血友病をめぐる医療の現状はどうなっているのだろうか―。血友病の治療では、体内に欠乏している凝固因子を注射により補充する。ワイスのメディアセミナーで講演した東京医科大臨床検査医学講座の福武勝幸主任教授によると、以前は出血した際に注射をする「出血時補充療法」が行われていたが、関節が出血によって腫れを繰り返すことで、血友病性関節症と呼ばれる激しい骨の変化による運動障害が出現するなどの問題があった。
 このため現在では、欠乏している凝固因子を定期的に補充する「定期補充療法」により健常者に近い状態を保つことで、頭蓋内出血などの重篤な出血や関節症を防ぎ、QOLを改善する治療が広まりつつあるという。 血友病の医療提供体制という観点から見ると、「専門医自体が不足しつつある」と福武氏は指摘する。血友病の領域では「薬害エイズ問題」を受けて、この領域を専門とする医療従事者が増えず、限られた医療従事者が治療に携わってきたが、その従事者らが高齢になり退職していく一方で、後を受け継ぐ人がほとんどいないという。こうした専門医の不足により、長期診療や包括医療が困難になっていると福武氏は指摘する。
 
■成果が期待される患者・家族の全国集会
 今年の世界血友病デーでは、全国的な患者・家族の集会「全国ヘモフィリアフォーラム」が開催される。
 血友病患者らはこれまで、全国的な患者会がないという大きな問題を抱えてきた。全国ヘモフィリアフォーラム実行委員会によると、「薬害エイズ問題」が患者と家族に身体的・精神的な打撃を与えたことで、各地に存在していた血友病患者会の相当部分が活動の停滞や休止に追い込まれ、全国的な血友病患者会も事実上消滅した。ようやく実現する全国規模の患者・家族の集会―。その成果が期待されている。


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